Nature Guide
                         くりんとの自然観察ガイド

           
   
 プライベート・トゥリー −甲虫の集まるの木ー

    最初の訪問者ノコギリクワガタの♂♀

 私の小学生の頃の夏休みといえば、カブトムシ捕りと川遊びが日課だった。当時の私たちにとって、カブトムシよりクワガタの方が人気があり、それぞれ方言名(「」書き)も付いていた。
 ○オオクワガタ → 「クマ」
 ○ミヤマクワガタ → 「ランドセル」「ダットサン」
 ○ノコギリクワガタ → 「スイギュウ」「ノコ」
 ○コクワガタ → 「ヤナギ」
 ○クワガタの♀を総称して →「イシ」
 ○カブトムシ → 「ゲンジ」
そして、上記の甲虫類を総称して「カブト捕り」と呼んだ。

 奈良では、カブトムシやクワガタムシの集まる木として「クヌギ」が最もポピュラーである。こちらの雑木林でも、かつて薪炭用にコナラと共にクヌギが植えられたと思われる。図鑑等には、コナラやシイなど他のブナ科の樹木の樹液にも甲虫類は集まるとあるが、私自身コナラの木でカブトムシやクワガタを捕まえたことがない。甲虫類にとってクヌギの樹液こそ一番のご馳走であり、好き好んでコナラにありつかなくても、私の住まい周辺にはクヌギが多いということだろうか。
したがって、クヌギこそ「カブトの木」であり、最も最初に覚えたブナ科の木である。どの地へ行こうが車窓から見つけようが、クヌギに心躍るという条件反射がいつしか備わった。

 数十年前の話とはいえ、昔も今も、カブト捕りは戦いである。シーズン中、めぼしい木は常に誰かのチェックが入っている。そこで、だれよりも早く早朝に出かけたり、だれにも悟られぬよう蜜を塗ったりと子どもなりの努力はしたが、それでも、自分だけしか知らないカブトの集まるクヌギの木を見つけることが、当時の私の「憧れ」だった。そんな幼少の頃の夢というものは、深層心理の中でいつまでも息づいているものらしい。
 6年前裏山に、クヌギの幼木を植えた。「孫の代にでも、クワガタが集まればいいなあ」というささやかな思いであったが、このクヌギという木は非常に成長が早い。この5〜6年で直径は10cmを越え、昨年あたりからカナブンやスズメバチが集まりだした。そして今年、ついに「ノコ」のつがいを発見!この日は2本のクヌギから、計5匹のノコギリクワガタを確認できた。あれから何年の歳月を経ただろうか。
ついに自分だけのカブトが集まるクヌギの木を手に入れた。そうなると、この5匹のクワガタは捕まえるよりも、その場所でそのままにしておきたくなるものだ。裏山がそのまま虫かごになったのだから。プライベート・ビーチならぬ、プライベート・トゥリーの実現だ。近所の子どもたちよ、今しばらくこのオジサンに、この喜びを独り占めにさせてくれ!

2001年6月にクヌギの幼木を植樹   2006年に集まった昆虫たち    2007年7月現在の“My クヌギ”

 

 
   

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