Field Guide
                         くりんとのフィールドノート

           
   
 吉野奥千本から 青根ヶ峰 へ

西行庵周辺

 4月23日(2008年)、平日に休みが取れたので吉野の桜を見に行こうと思ったが、下千本から上千本は時すでに遅し。花見情報によると、かろうじて奥千本が満開だったので出かけた。シーズン終盤で平日にもかかわらず、竹林院近くから出ている奥千本行きバスの停留所には行列ができていた。私は金峰神社までアウトバックを走らせる。神社近くには十数台分の駐車場があり、バスもここまで来ている。ここからリュックを担ぎ、金峰神社から西行庵、そして青根ヶ峰を経由して神社まで戻る行程をとる。

 スタート地点の金峰神社周辺には、追っ手に囲まれた義経が屋根を蹴破って逃げたといわれる「義経隠れ塔」もあるが、花見シーズン以外はおそらく閑散とした社だろう。ここから20分ほどで「西行庵」のある谷間にたどり着くが、どうもこのあたり を奥千本というらしい。というのも、蔵王堂周辺の下千本のような一目千本といった華やかさは、この奥千本の形容ではない。 ソメイヨシノとは違って、1本1本ではさほど見栄えのしないヤマザクラが、寄り添うようにしてなんとか谷間に彩を与えている。

 ここは院政期〜鎌倉初期の歌人西行が一時期俗世をさけて隠遁していた場所で次のような歌を詠んでいる。
 「とくとくと 落つる岩間の苔清水 汲みほすまでも なきすみかかな」(西行)
また、江戸期の俳人松尾芭蕉は、西行の歌心を慕って二度もこの吉野山を訪れたといわれ、この地で以下の歌を残している。
 「露とくとく 試がに浮世 すすがばや」(芭蕉)
こうした西行の庵を復元したものや、歌に詠まれた苔清水と共に楽しむのが奥千本の風情だろうか。

 この西行庵から青根ヶ峰まで約30分。西行庵を経由せず、金峰神社から直接青根ヶ峰を目指すルートがあり、こちらが蔵王堂から山上ヶ岳を目指す世界遺産「奥駈道」だ。その途上、女人結界の碑もみられ、ここから青根ヶ峰山頂はすぐだ。山頂でお弁当をとり、帰路は車道を使って金峰神社まで下る。サクラ以外にも山肌のコブシが満開、下に目をやればタチツボスミレやヤマルリソウが咲きほこる。ちょっと通な“奥千本”。

金峰神社入り口 左は青根ヶ峰だが、右西行庵へ進む  桜に負けじとヤマルリソウ

西行庵 西行の句にも詠まれたという苔清水  青根ヶ峰付近には女人結界の石碑
 
   

Copyright (C) Yoshino-Oomine Field Note