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Guitar Case 89

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トラベリング・ウィルベリーズ The Traveling Wilburys

【ウィルベリーズ・メンバー】
ロイ・オービソン Roy Orbison
(1936-1988 アメリカ)
 1955年にレコード・デビュー、伸びやかなファルセットが特徴的な歌声とロカビリー調の楽曲で、1960年代前半から中盤にかけて大成功をおさめた。代表曲は「オー・プリティ・ウーマン」や「オンリー・ザ・ロンリー」など。愛称は、ビッグ・オー(The Big O)。「ローリング・ストーンの選ぶ歴史上最も偉大な100人のシンガー」に於いても第13位であるなど、ロック黄金期に活躍したスターがこぞってリスペクトしており、特にディランによる賞賛は最上級。

ボブ・ディラン Bob Dylan (1941- アメリカ)
 1962年のレコードデビュー以来半世紀にわたり多大なる影響を人々に与えてきた。代表曲は、「風に吹かれて」「時代は変る」「ミスター・タンブリン・マン」「ライク・ア・ローリング・ストーン」など多数で、グラミー賞やアカデミー賞などの受賞をはじめ、2008年には、「卓越した詩の力による作詞がポピュラー・ミュージックとアメリカ文化に大きな影響与えた」としてピューリッツァー賞特別賞を受賞、詩人としてノーベル文学賞の候補者にも名前が上がっているほどだ。「ローリング・ストーンの選ぶ歴史上最も偉大な100人のシンガー」において第7位。

ジョージ・ハリスン George Harrison ( 1943-2001 イギリス)
 言わずと知れた元ビートルズのメンバーで、リードギタリストとして活躍した。解散後はソロとして活動、「マイ・スウィート・ロード」や「ギヴ・ミー・ラヴ」「セット・オン・ユー」などをヒットさせたほか、『オール・シングス・マスト・パス』(1970年)は、ロック・アルバムの金字塔として高く評価されている。ボブ・ディランやエリック・クラプトンをはじめ彼を慕う親友は多く、「友達全員を特別扱いする」とまで言われるほどその人柄はあたたかい。

ジェフ・リン Jeff Lynne (1947- イギリス)
 ELO(Electric Light Orchestra)のリーダーとして有名で、1970年代から80年代にかけて「テレフォン・ライン」「シャイン・ラヴ」「ザナドゥ」など数々のヒット曲を連発し、一時期はギネスブックに「最も多くの全米トップ40ヒットを飛ばしたグループ」として紹介されていた。最近は、プロデューサーとしても評価が高く、80年代後半以降、デイヴ・エドモンズ、ジョージ・ハリスン、リンゴ・スター、トム・ペティ、ロイ・オービソン、デル・シャノンなどのプロデュースを手掛けている。

トム・ペティ Tom Petty ( 1950- アメリカ)
 1976年にトム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズの中心人物としてデビュー以来、ライブ活動やアルバム・リリースをコンスタントに続けており、現在でもアルバムは全米チャートのトップ10に食い込むほどの人気を誇る。欧米と日本とでは、その知名度の落差が大きい。彼自身が最高のロッカーである一方で、50〜60年代の先輩達へのリスペクトを大切にしており、彼とそのバンドが活躍する限り、アメリカン・ロック・シーンは大丈夫だと思わしめる存在。
(※ 以上、Wikipedia参照)

【ウィルベリーズ伝説】
 1988年4月6日の夜、伝説は始まった。ジョージは前年に発表した『クラウド・ナイン』から“This is love”をシングル・カットするため、B面用にもう一曲用意する必要があった。その日の夕食で、プロデューサーのジェフ・リンに加えロイ・オービソンも同席していたたが、「明日、スタジオ入りするよ」と伝えると、ロイも録音に参加しようということになった。ディランの自宅スタジオを借りることにもめどがつき、さらに、ジョージがトムの家に置いていたギターをとりに行くと、彼もレコーディングに顔を出すことが決まった。
 そして翌7日、家主のディランも加わって5人での曲作り始まった。みんなでいじくりまわしてあれよあれよという間に、“Handle with care”のデモ・テイクが出来上がっていた。あまりの出来映えの素晴らしさに、それをどうしていいか決めあぐねてたジョージは、この5人であと9曲録音して、アルバムを作ってしまおうというプロジェクトを思いついた。
 1ヶ月後、LAにあるデイヴ・スチュワートの別荘スタジオでレコ−ディングが始まった。「おい、ロイ・オービソンがメンバーだぜ」と、再び集まったアーティストたちは興奮気味。ディランはツアーがあるため、10日間でレコーディングを終わらせ、あとは4人で楽しく仕上げた。作詞・作曲も5人の共同作業、お互いにアイデアを出し合い、ヴォーカルをとってかわり、みんなでコーラスをつけ、9曲が出来上がっていった。
 こうして形が整ってきたアルバムだが、問題はそれぞれの所属レコード会社が異なること。そのため、5人それぞれの本名は隠し、ウィルベリー兄弟を名乗る覆面バンドを装うことにし、『The Traveling Wilburys Vol.1』が世に出た。しかし、大ロック・スターのユニットであることは瞬時にばれ、完成度の高いアルバムは大ヒット、アメリカ・ビルボードのアルバム・チャートで2位、キャッシュ・ボックスでは1位を記録してプラチナアルバムとなる。ところが、そうした朗報の数日後に、年長のロイは心臓発作で急逝。葬儀の翌日、メンバーはシングル・カット曲の“End of the Line”のビデオ撮影を行い、彼の遺影とギターを共にしながらの追悼演奏となった。
 さらに伝説は続く。4人のあつい友情は、1990年春、再び結集。ウィルベリー兄弟はLAでレコーディングを開始、『The Traveling Wilburys Vol.3』として発表する(なぜかVol.2をとばしてVol.3)。一作目の伝説は褪せることなく、ウィルベリー・クォリティは確かに保たれた。このアルバムのインナーには、こう記されてある。
  “Volume 3 is dedicated to LEFTY WILBURY”  「このアルバムをレフティ・ウィルベリー(長男役のロイ)に捧ぐ」

【ウィルベリーズ・サウンド】
 それぞれ独自のスタイルと世界観をもつ5人のアーティストたちだが、その共通因子は「50年代後半のロックンロール・サウンド」。メンバーそれぞれが腕に覚えのある懐かしいサウンドを、出し惜しみされることなく、新しいスタイルでここに蘇った。アコスティック・ギターをサウンドの基本としながら、美しいコーラスやハーモニカといったシンプルで腕の良いお化粧を施し、懐かしく飽きのこないギター・リフが心地よいグルーブ感を生み出している。ビートルズをもっと聴きたければ、ポールでもジョンでもなく、まちがいなくジョージの楽曲だろう。彼が最も正当なビートルズ・サウンドのDNAを受け継いでいると言ってもよい。また、あの頃のボブ・ディランをもう一度聴きたければ、ウィルベリーズを紐解くと良い。私自身も50歳を過ぎて未だバンドごっこをやる端くれの一人だが、原点に立つことの心地よさに今浸っている。
 とは言うものの、全く質の異なる複数のヴォーカルや才能の共演にどう折り合いをつけるのか、下手をすれば有名人の寄せ集めバンドになってしまいがちだが、ウィルベリーズ兄弟にはもう一つの共通因子があった。ロイ・オービスは年長で、ディランやジョージの60年代ロック黄金期よりも、世代が1つ前になる。しかし、年下の弟たちは、その長兄の美声と音楽を敬愛し、ロック創生期の偉人をリスペクトしてやまない。この姿勢こそが、ウィルベリーズの背骨となり、バンドの絆とあたたかさを形成している。
 音楽経験豊富な兄弟たちは、一人の持ち込んだキャッチーなフレーズに、みんなで詞を書き加え、メロディーやコード進行のアイデアを出し、ディランがハーモニカを加えれば、ジェフがコーラスをリードする。こうした音楽の作り方がウィルベリーズの基本だが、メンバーは「これはジョージのバンドだ」と言う。一方ジョージは、「僕の仕事は友情を守ること。友情が壊れないように見張っていた」と答えるが、ウィルベリーズ・サウンドにジョージを核とした友情が存在することも付け加えておかなければならない。
 なお、アルバムは1990年代後半に廃盤となったが、2007年7月、ボーナス・トラックを加えたデジタルリマスター盤が発売された。とりわけ、『Vol.1+Vol.2+DVDの3枚組』のDVDに収録されたレコーディング風景やPVはとても興味深い。ウィルベリーズの出発点で象徴的な1曲となった“Handle with care”では、5兄弟が1本マイクに円陣を組んでギターを弾き、ヴォーカルをとってかわり、コーラスをつける風景が映し出され、楽しく友情に満ちあふれた音楽空間が視覚的にも読み取れる必見の映像だ。

【The Traveling Wilburys Vol.1】
1. Handle with Care
 この曲の制作をきっかけに、ウィルベリーズ伝説が始まった。ディランに「曲名は?」と尋ねられたジョージは、目についた段ボール箱の注意書き『Handle with care (取扱注意)』をそのまま伝えると、ディランは「いいタイトルだ」と作詞を手伝った。ジョージのメロディアスなヴォーカルで始まり、サビはロイの伸びやかなファルセット、そしてボブとトムのコーラスが楽しく突っ込んでくるという趣向。このアルバム中の曲にたびたび登場する象徴的な役割分担といえる。

2. Dirty World

 エンディングで5人が順番に、『He loves her ○○.(彼女の○○を愛している。)』の○○の部分のヴォーカルをとるという趣向。雑誌をみんなに配って、それぞれが気に入った言葉を拾い出してきたらしい。練習風景が録画されていて、ロイが“Traveling” を“Trembling”と何度も言い間違え、みんなで大うけしているところが印象的だ。

3. Rattled

 このバンドのドラマーは、ジョージの親友のジム・ケルトナー。スタジオ内の冷蔵庫に目を付け、扉や棚など片っ端からたたいていい音を探し、レコーディングにも使われた。メンバーは「これがロックン・ロールの根源さ」と言う。

4. Last Night

 トムがシニカルに歌う一方で、ロイのサビとのコントラストがおもしろい。曲が出来上がると、順番にヴォーカルをとってみて、だれが一番その曲に合うか決めたようで、さながらオーディションだったとその緊張感を楽しく振り返る。ビデオでは、“Last Night”に出会った女について、メンバーがあれこれアイディアを出し合いながら詞を書いているシーンがある。

5. Not Alone Any More

 この曲で、メンバー全員の夢がかなった。ロイ・オービスが練習し始めると、スタジオ別荘内どこいてもあの美声が聞こえてくる。ロイという最高の歌手とボブという最高の詩人がそろったバンドなんだから、なんとかロイのヴォーカルで最高の作品を作り上げたいと願ったようだ。60年代後半以降、十分な活躍の場に立てなかったロイは、その後、事故で奥さんを亡くし、さらに火事で息子2人も失った。自身は心臓を患い、過酷な運命と戦ってきたが、ここきて最良の友と出会い、“Not Alone Any More”と歌う。
 ジョージは、ある夜、どうしても1つのコードが気に入らないと一人でスタジオに戻ってきて違うコードを試していると、他のメンバーも徐々に合流してきて再び曲作りが始まったそうだ。バックのコーラスでは、ロイの美声を邪魔しないようにずいぶん苦労したという事後談もある。いずれにしても、メンバー肝入りの最高の1曲だ。

6. Congratulations

 ボブが持ち込んだ曲だが、みんなで作った。それぞれが質の高いアイデアをもっているから、ボブの曲らしくもあり、また一方でふ〜っとさわやかな風が流れ込む。豪華なコーラス陣も思い浮かべて聞いてほしい。

7. Heading for the Light

 軽快なアップ・テンポの曲調は、ジョージの面目躍如。どこかで聞いたことのあるような懐かしいギター・リフは、私自身結構気に入っている。「明日に向かってがんばって歩いて行こう」という応援ソングだと、勝手に解釈しているが。

8. Margarita

 電子音で始まる曲だが、耳慣れたギター・コードのリフレインがアコースティック感 満載。2枚組のアルバムを聞き込んだ後、とてもいかした曲に思えてきた。曲の最後で、トムのヴォーカルが合いの手のように入ってくるところにまたしびれる。

9. Tweeter and the Monkey Man

 アメリカ人同士のボブとトムがとりとめもなく話している会話をカセットテープに録音し、ボブが詞におこした。レコーディングもスムーズで、1回目はウォーミングアップ、2回目でヴォーカル録りは終え、あとはちょこちょこと詞を手直しした程度らしい。ちなみにボブの字はとても小さくクモが這ったみたいで、その走り書きの歌詞カードでよく歌えたもんだとトムが驚いている。

10. End of the Line

 カントリー調の曲だが、ギターの軽快なバッキングによって、古くささを感じさせない。“End of the Line”とは、電話線の向こう側、この道の行く先、汽車の終着点、人と人との繋がり、ひいては、ジョージによると輪廻転生をも意味するらしい。PVでは、列車に揺られながら旅をするウィルベリーズ一座という設定で、メイン・ヴォーカルはジョージ→ジェフ→ロイの順に回しているが、ロイの順のところではロッキングチェアに揺られた彼のギターと遺影が映し出されている。ロイは、この撮影の直前に心臓病で他界したのだった。さながら追悼ライブのようだ。

 前奏の印象的なギタープレイはジョージ。ドラマーのジムはスネアの皮の上にタンバリンをおき、その上からスティックとブラシで叩たくという面白いプレイが目を引く。また、このバンドでは、トムがベースを担当しているようだが、ギターリフのようなコーラスの合いの手がいい。この曲で、ジェフのヴォーカルも一級品であることを再認識した。

11. Maxine

 2007年のアルバム再販に際して、新たに加えられたボーナス・トラック。シンプルなアコースティック・ギターのストロークに、ジョージのヴォーカルがからむ。

12. Like a Ship

 こちらも未発表音源からのボーナス・トラック。ヴォーカルはいうまでもなくボブ。


by くりんと