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Guitar Case 88

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「高倉健」という生き方

 高倉建自身にとって6年ぶりとなる映画『あなたへ』が公開されている。81歳になった高倉にとって、長年の盟友降旗康男監督からのオファーも、「またこれ断ったら監督と、もうできなくなる年齢が来てるんじゃないかなと、2人とも。それはもう1本撮っておきたいよな」という理由で受けたと本人が語る。同じように、彼の映画に向き合う心の内側も、そろそろ語っておく必要があるかなと、この度NHKの密着取材を許可し、『プロフェッショナル仕事の流儀』という番組で放送された。

 彼は、映画俳優「高倉健」として生き抜くため、自分自身に課していることがいくつかある。
 まず1つ目は、いつでも映画出演できるよう肉体の管理である。何十年も変わらないというウェストを維持するため、例えば、朝食はナッツのたっぷり入ったシリアルにヨーグルトをかけたものときめ、大好きな甘い物も我慢し、夕食まで食べ物はほとんど口にしない。ウオーキングも欠かさず行うという。また、銀座へ飲みに出歩くこともない。数年に一度しか映画に出演しない高倉にとって、それらは日常ほとんどは人目に触れることのない習慣だ。
 2つ目、高倉が体調管理以上に心を砕くのが、気持ちを常に繊細
で、感じやすい状態に保っておくことである。そのためにふだんから、映画や小説、音楽、大好きな刀剣や美術品に触れ、時に海外に旅に出て、心をさらす。そうして、自分の感性に磨きをかけている。

 とりわけ、人に出会うことも大切にする。「どういう人に出会うか、人生でそこで決まるんじゃないですか。やっぱりいい人に出会うと、いろいろなものをもらいますよ」と続ける。自分が感じられるものを追いかける姿勢に、こんなエピソードもある。村田兆治の引退試合中継を見て感銘を受け、それまで面識も無かった村田の住所を関係者に一通り尋ねて調べ、さらに留守中だった村田の自宅前に、花束を置いて帰ったというのだ。
 3つ目、高倉は「俳優は私生活を見せてはいけない」という信念をもっている。同じことを、フーテンの寅さんを演じた渥美清も徹底して守り続けた。
 4つ目、「現場で座らない」という伝説がある。「全部武ちゃん(北野武)の作り話です」とうそぶくが、81才で臨んだ今回の映画現場でも、スタッフのそばにそっと立ち続ける姿が見られた。「居たい。そばに。なるべく居て見ていたいですね。鳥肌が立つ思いの時ありますよ。スタッフの、ぼくは狂気の集団と言ったけど、本当にあの人たちの努力ですよね。(中略)そういうのを分かるのに何十年もかかるよね。ぱっときても分からない」とその理由を述べる。

 このような俳優の「生き方」が芝居にもにじみ出る。ふだんどんな生活をしているか、どんな人とつきあっているか、何に感動し何に感謝をするか。そうした役者個人の生き方が、芝居に出るというのだ。さらに、「プロフェッショナルとは?」と聞かれて、「生業」ときっぱり答えた。私は、私の生業 のために、いったい何を課してきただろか。まだ、遅くはないかもしれない。

(追記)
 1つの作品を終えるたび、スクリーンから離れ、何年も人前から姿を消す高倉健の習わしがある。となると、あと何本も映画が撮れないかもしれない。私の希望を聞いてもらえるなら、あと一回でいいから、山田洋次監督との新作を見てみたい。

by くりんと