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PINK MARTINI & SAORI YUKI  『1969』

 由紀さおりとジャズ・オーケストラ・グループPINK MARTINIとのコラボ・アルバム『1969』に、海外で火がついた。2011年11月2日付のiTunesジャズ・チャート及びカナダiTunesチャート・ワールドミュージックで は、第1位獲得という快挙も達成した。
 世界中で260万枚の売上実績を持つPINK MARTINIのリーダー トーマス・M・ローダーデールと由紀さおりとの出会いは、トーマスが偶然手にした由紀さおりのLPレコードを聴き、アルバム“Hey Eugene!”で「タ・ヤ・タン」をカバーしたことから。そのことを知った彼女は、猛ラブコール を送りアルバムの共作を実現した。
 このアルバムは「1969年に発表、またはその時代を象徴する名曲をカヴァーする」というコンセプトで、歌謡曲で 育った由紀

さおりが、KAYOU-KYOKUを世界に発信し、しかも日本語のまま打って出るというわけだ。かつて、多くのミュージシャンが世界に挑んだ 。しかし、歌謡曲で勝負したのは坂本九の『上を向いて歩こう』以来ではないだろうか。日本から一歩も外に出たことのない禅宗のお坊さんが、ローマ法皇と対等にわたり合うかの如く、これぞ真の“international”ではないかと 、私は手をたたいた。

 購入した『1969』はアメリカ盤で、日本発売のものと曲順が異なる。1曲目に、琴のアレンジの効いた『夕月』をもってきたのは、いかにも海外向けという選曲だが、日本盤の1曲目『ブルー・ライト・ヨコハマ』 というのも、買い手を意識した似たり寄ったりの媚かな。(笑)さて、私のお薦めは、日米盤共通の2曲目『真夜中のボサ・ノバ』とラスト2曲の『わすれたいのに』と『季節の足音』。ちなみに、彼女の代名詞『夜明けのスキャット』は、何十年か前の原曲の方がいい。
 『真夜中のボサ・ノバ』は、ヒデ&ロザンナが歌っていたことをあらためて知ったが、このアルバムの男性ヴォーカルのハモリがとても素敵だ。ヒデ&ロザンナのバージョンも、YouTubeで聞くことができ るが、あの二人の雰囲気あるデュエットも、その後は唯一無二だなあ。
 さて、『わすれたいのに』は、どれほどの方が知っている曲だろうか。もちろん私は初めて聞いた。あまりにも美しい曲なので、元歌 はと紐解いてみると、1969年当時、ニッポン放送の名番組「パンチ・パンチ・パンチ」のパーソナリティだった3人が、“モコ・ビーバー・オリーブ”というグループを組み発表した曲 だそうである。ちなみに洋楽のカヴァーである。こちらも素晴らしいコーラス曲で、由紀のものと聞き比べてみたい。 私にとってはお姉さんたちのあまいコーラスを、是非、リアルタイムで聞いてみたかったなあと、少し悔しい思いがした。ちなみに、オリーブこと本名シリア・ポールは、その後、大滝詠一のプロデュースで『夢で逢えたら』をリリースしており、こちらの方はご存知の方 も多いかもしれない。
 では、『季節の足音』はいったいだれの曲なのだろう、と興味津々であったが、ヴォーナス・トラックというクレジットがついてい た。つまり、こちらは作詞:秋元康、作曲:羽場仁志で、1969年作品ではなく由紀のための書下ろしである。 そんなことは置いておいて、この曲の詞に共鳴。嗚呼、秋元康の才能が憎い。

  季節の足音は 脈打つこの鼓動 人は何度 春夏秋冬 巡るのでしょう
  穏やかに時は過ぎ 今日も輝いて 一日が終わることを 感謝しています

 では、大人の“KAYOU-KYOKU”を、心ゆくまで聴いてください!

日本盤 海外盤

1. ブルー・ライト・ヨコハマ
2. 真夜中のボサ・ノバ
3. さらば夏の日
4. パフ
5. いいじゃないの幸せならば
6. 夕月
7. 夜明けのスキャット
8. マシュ・ケ・ナダ
9. イズ・ザット・オール・ゼア・イズ?
10. 私もあなたと泣いていい?
11. わすれたいのに
12. 季節の足音 (ボーナス・トラック)

1. Yuuzuki [Evening Moon]
2. Mayonaka No Bossa Nova [Midnight Bossa Nova]
3. Du Soleil Plein les Yeux [Eyes Full of Sun]
4. Puff, the Magic Dragon
5. Ii Janaino Shiawase Naraba [It's Okay If I'm Happy]
6. Blue Light Yokohama
7. Yoake No Scat [Melody for a New Dawn]
8. Mas Que Nada
9. Is That All There Is?
10. Watashi Mo Anata to Naite Ii? [Consolation]
11. Wasuretainoni [I Want to Forget You, But...]
12. Kismets No Ashioto [Footsteps of the Seasons]

by くりんと