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鎮守の森コンサート

「鎮守の森」とは、神社に付随した森林。「杜(もり)」の字をあてたり、「社叢(しゃそう)」と呼ぶ場合もある。宮脇昭氏などはそこの植生に注目、その地域本来の植生が極相林に近い形で残されている所も多く、森林生態学的にも保護すべき貴重な森林と唱えている。西日本では、シイやカシなど照葉樹の大木がみられ、鬱蒼とした空間はまさに縄文時代以前の風景かもしれない。
 一方、小学校唱歌の『村祭り』に登場した「鎮守の森」がそうであるように、そこは地域の氏子や村人の楽しい社交場でもあった。収穫を祝う秋祭りに加え、市が開かれ猿回しや獅子舞といった芸能が演じられるなど、余興の少ない時代には1年でもっとも楽しみな年中行事の1つがここであった。
 中世までさかのぼると、「猿楽」という芸能がある。散楽の流れをくむ軽業や手品、曲芸、呪術まがいなど多岐に渡る芸能のうち、
物真似などの滑稽芸を中心に発展していったのが「猿楽」と言われている。その「猿楽」は社寺の庇護を得て、祭礼の際などに芸を披露した。やがて、公家や武家の庇護も得つつ、能や狂言に発展していったと言われている。 

 話は長くなったが、このように「鎮守の森」と芸能は、長い歴史の中で相互補助の関係にあり人々に親しまれてきた。ところが、戦後にわかに、人々の足は「鎮守の森」から遠のく。バイパス道路が通るといえば森は削り取られ、スポーツや文化講座のための社交場には、体育館や公民館が建つ。また、芸能人やミュージシャンにとってのステージは、テレビや寄席、コンサートホールがとってかわることになる。今や、「鎮守の森」に大勢の人々が足を向けるのは、初詣ぐらいだろうか。 

 ところが、この「鎮守の森」で音楽会を催し、再び地域の社交場として人々に足を向けてもらおうという試みが、奈良県五條市で20年にわたって行われてきた。御霊神社の「鎮守の森コンサート」。どの公的機関にも、またスポンサーにも頼らない、地域住民とサポーター手作りのライブステージ。入場無料のコンサートゆえ、資金は賛助会員によるカンパのみだ。実際のところ、一流のミュージシャンを呼ぼうと思えばお金がかかるし、ギャラなしでは、プロの方にはなかなか来てもらえない。こうしたジレンマをなんとか克服してきたのも、主催者の人脈と腕の見せ所と言える。この20年の間には、西岡恭蔵、大塚まさじ、桑名晴子、佐川満男、大島保克、岸部眞明、有山じゅんじ、増田俊郎、島田和夫、小坂忠、長田TACO和承といった綿々たるアーティストが顔を並べた。
 私は、第1回のまだ「木漏れ日コンサート」と称して始めたころのライブから目撃している一人である。そして、第15回にはエンヤトット一座としてステージに立った。このときは、スペシャルゲスト佐川満男の存在感に圧倒されたけど、「ずいぶんうまくなったな」と主催者代表HARUさんからのうれしいお言葉。このように五條にすっかり定着してきたこのコンサートも、実は今年で最後となった。20年を機に、一端(?)幕を下ろすらしい。その最後のステージに、「エンヤトット一座も是非」と再び声がかかった。千秋楽2010918日は、8時間ぶっ通しのコンサート。気合いを入れて本番にのぞんだ後は、缶ビール片手にゆっくりと種々の音楽を楽しんだ。私的には、トリを飾った良元優作&西條渉のステージに釘付けとなる。とりあえず(?)ファイナルとなった「鎮守の森コンサート」だが、ここを土俵に次の若い芽が確実に育ってきていることも、この目で確かめることができた。

by くりんと