Guitar Case 79

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つじあやの的展開

つじあやのと言えば、ジブリ映画『猫の恩返し』の主題歌『風になる』で知られるシンガー・ソングライター。
そういう私は、彼女のことをほんの少し前まで全く知らなかった。
最初に聴いたのは『プカプカ』。
ウクレレ一本の伴奏に、ほんのりふわぁっ〜とした女性ヴォーカル。
『プカプカ』の中の西岡恭蔵色はすっかり浄化されてしまっている。
この1曲ではまった私は、YouTubeとにらめっこ。
つじあやの的展開に、目から鱗が3〜4枚はがれ落ちた。

で、1枚目の鱗というのは、ウクレレ一本の弾き語り。
今どき、アマチュアでさえフォーク・ギター一本で歌うことをはばか

COVER GIRL
COVER GIRL

るのに、ウクレレ一本での弾き語りとは、実に古くて新しい。
オヤジ化しつつある私には、「ウクレレの弾き語り=牧伸治の歌謡漫談」の
イメージがこびりついて、逃れられない。
「ギターを弾きたかったが、手が小さかったためウクレレを始めた」と聞くが、彼女にとっては何のためらいもなく、自然な流れだったのだろう。
私の手は十分大きいが、もし、もみじのような手だったとしても、牧伸治の範疇を乗り越えることはできなかっただろう。

2枚目の鱗は、70年代後半生まれの女性による、まさかの『プカプカ』のカヴァー。
私と同世代(60年代生まれ)であっても、どれだけ西岡恭蔵を知っているだろう。
ちなみに彼女は、吉田拓郎の『結婚しよう』、井上順二の『お世話になりました』、ロスインディオス&シルビアの別れても好きな人』、大滝詠一の『君は天然色』、シュガー・ベイブの『パレード』など、オヤジ心をくすぐるような往年の ヒット曲もカヴァーしている。
フォーク、演歌、ロックとジャンルにとらわれず、あくまでもつじあやの目線。
いずれもほんわかした、つじあやの的アレンジで消化され、癒しを与えてくれる。

3枚目の鱗は、『COVER GIRL』というアルバムのコンセプト。
2枚組計14曲が収録されているが、Disk1は 「tokyo side」でスタジオレコーディング。
そして、Disk2が 「kyoto side」で、彼女の地元京都ゆかりの地でのレコーディング。
特にDisk2の曲は、鴨川の川縁や出身校の体育館などで録音され、おもいっきりウクレレ一本勝負。
中でも、実家の自室で使いこんだラジカセに一発録りした「Swallowtail Butterfly -あいのうた-」などは、彼女の発想と度胸に唖然としてしまう。

4枚目の鱗は、熱唱しないふんわかした癒し系ヴォーカル。
鼻歌がCDにのっかてるというのは、言い過ぎだろうか。
か細い声を、もがきふりしぼっていた私にとって、「歌唱力ってなんだろう」と、新たな道標と課題を提起してくれた。

「俺って、なんと自己規制の強い男なんだ。」
つじあやのに、うちのめされた今年の春です。

by くりんと