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愛しあってるかい?ベイべ!

 忌野清志郎、享年58歳。こんなにかっこいい58歳がいただろうか。『ぼくの好きな先生』を歌っている映像から、デビュー当時の彼を知ることができるが、決して男前ではないし、容姿だけだと全くさえない。『い・け・な・いルージュマジック』を歌っていた頃の化粧やファッションも好きではなく、かえってとっつきにくかった。ところが、派手な衣装はさらに拍車をかけ、還暦前の顔に華美な化粧を施すいでたちは相変わらずなのに、今は超かっこいいと信望する。

 この10年の間に彼の歌をたくさん聞きこんだ。きっかけは、「パンク君が代」が物議をかもし出し、大手のレコード会社から発売を断られてインディーズで発表した時である。その時、当時のニュースステーションという番組に出演して、『空がまた暗くなる』を歌っているのを聞いたからだ。私が今まで聞いてきた岡林信康や高田渡、河島英五ではないプロテスト・ソング。むしろ、ジョン・レノンやボブ・ディランに近いかもしれない。
 そういえばある日、カー・ラジオから「♪天国はな〜い」という日本語歌詞のイマジンが流れてきた時にも衝撃を受けたが、彼のカバー曲だと後に知った。その『Covers』というアルバムのなかの原子力発電所に疑問を投げかけた1曲が原因で、これまた放送禁止となったため、覆面バンドTimersを結成。当時のTV番組「夜のヒットスタジオ」に生出演し、FM東京をミソカスになじったゲリラライブの映像にもたどりついた。もうこなったら、あらためてRCサクセション時代の曲から順に聞くしかない。
 そんな彼の作品は言うまでもなく、自身のゆるぎない信念と行動力、勇気とニュートラルな精神性にどっぷりはまり込んでいくことになる。すると、あのド派手なパフォーマンスがかっこよく見えてくる。最近のライブで『雨上がりの夜空に』歌うとき、身につけて登場するマント姿は何べんもくり返しDVDで見たものだ。ちなみに、派手な衣装はウィルソン・ピケットのスーツに倣って始めたもので、「愛しあってるかい?」は、オーティス・レディングから引用したもの。軽快な動きはジェイムス・ブラウンやミック・ジャガーの真似だった(2009年5月9日付朝日新聞「文化欄」から引用)というが、それら先達のスタイルを見事に消化して自分のスタイルとしている。

 そんな忌野も、ステージを下りるとやさしくシャイで温和な語り口調のお父さんだ。「青山ロックンロールショー」銘うったお別れ式の遺影には、ステージの忌野ではなく、スーツ姿の笑顔で家族思いの子煩悩な父子煩悩な栗原清志の写真が掲げられていたことがとても印象深い。
 幸か不幸か、私はまだ彼の作品をすべて聞いていない。ということは、彼はまだ、私に新曲を今しばらく提供してくれる。そして、私が50代になった時のお手本でもいてくれると言うわけだ。


by くりんと