Guitar Case 36

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伊藤若冲と林英哲

伊藤若冲(1716〜1800)という江戸中期の画家がいる。
『動植綵絵(どうしょくさいえ)』という全三十幅に及ぶ花鳥画が、若冲終世の大作で、最も有名である。

彼の生涯が興味深い。
京都錦小路の青物問屋の家督を23歳で継ぐが、家業には興味を示さず、やがて相国寺の大典和尚と出会う。
和尚には、彼の人となりが、
「 学を好まず、字をまたせず、およそ百の技芸、一つももってする所無く、人の楽しむところ 一つももとむる所なく。」(『藤景和画記』より)
と写ったらしく、人付き合いを嫌い、生涯独身を通す。
彼が唯一(?)興味を示したものは、絵を描くこと。
狩野派に師事し宋元画の模写にあけくれるが、そのうち生き物に「神気」を見出すようになる。
そして、かの傑作の数々。
彼の絵には、神がかり的な繊細さと狂信的な観察力が支配し、もはや狩野派の画風の及ばないところとなる。(→右絵:南天雄鶏図)
 

さて、このたび、和太鼓ソリストの林英哲が、「若冲の翼」なる看板を掲げ、海外公演をうってでている。
若冲が飛べない鳥を多く描いているところに目を向け、その生き様を問わんと英哲が太鼓を打つ。
彼の絵は、むしろ、アメリカなど海外での評価が高いように聞くが、それをニューヨーカー相手に(少し前のBSライブ)、和太鼓で謎解くという演出は、なかなか出来過ぎている。
林英哲ともなると、数多くのスタッフやスポンサーが取り巻き、世界を視野に入れているだろうから、それなりに計算された企画かもしれない。
あるいは、彼自身の多彩さの表れなのかもしれない。

彼のそうした演出をどうこう言うつもりはない。
むしろ、他のジャンルの芸術家と向かい合いながら自分の音楽を表現しようするというプロ(?)の手法に、大いに勉強させてもらっている。
しかも、欧米人を相手に若冲、というところがなかなかしたたかである。
そういう私も、ぬかりなく“寅さん”(『寅さんのロックン・ロール』)をいただきましたが、未だ世界が見えませぬ...。

by くりんと