Guitar Case 23

back!  menu!  next! トップへ!

シューベルト『ます』のオチ?

最近、車にクラッシックのCDを積み込んでは聴いている。
いつしか学校の音楽室で聴いたような聴かなかったような、メロディーに少し聴き覚えはあるのだが曲名や作曲者名が出てこない、といったクラッシックの入門編ばかり集めたようなCDである。
なかなかの掘り出し物もある。
いま、気に入っているのが、『ます(シューベルト)』『アルルの女のメヌエット(ビゼー)』『スラブ舞曲第10番(ドヴォルザーク)トランペット吹きの休日(アンダーソン)』などなど。

アウトドア派の私には、この『ます』という曲がかねてから気になる存在であった。
この曲のますは、彼の生れ故郷オーストリアという土地・河から判断すると、ブラウン・トラウトと推定される。
日本では、レインボー・トラウト(虹鱒)が各地で養殖されていておなじみだが、このブラウン・トラウトもけっこうあちこちの河川や湖沼で放流されていて、私も何度か釣り上げたことがある。

Die Forelle ます      by Schubart

澄んだ小川で さっと軽やかに
矢のように泳ぐます

僕は岸辺で  のんびり見ていた
元気な魚が  澄み切った小川で泳ぐのを

一人の漁師が釣竿を手に
岸のそばにやって来て
冷たいまなこで魚の泳ぎを見守った
水がこんなに澄んでいれば
よもやますも釣針に掛かることはあるまい
と僕は考えた

しかしついにあの盗人は しびれを切らし
ずるがしこく  小川をかきまわし濁らせた
そして あっという間もなく
竿はぐっと引き込まれ 掛かった魚ははねまわった
僕はかっときながら だまされた魚をじっと見つめた


さて、この歌詞に登場してくる釣り人だが、手にしていた釣竿の種類まで気になるのは、私だけだろうか。
この漁師の釣り方は、まず、澄んだ川のますを見て取り、その後川を濁らせて獲物を手にしている。
シューベルトの誕生より100年以上も前に刊行された、アイザック・ウォルトン(英)の『釣魚大全』を読み直してみると、当時の鱒釣りの方法として、ミミズや小魚、毛虫、羽虫を使った餌釣りと毛針を用いたフライ・フィッシングとがある。
歌詞には、「ずるがしこい盗人」という表現があるため、当時のインテリ階級の紳士のスポーツ・フィッシングであった毛針釣りは考えにくい。
よって、獲物を得るためには手段を選ばないより確実な方法の、餌釣りであった可能性が高いと推論する。

落ち着いた青春の  黄金の泉のもとにいる娘さん
みなさん  ますのことをお考えなさい
危険を見てとったら急ぐこと
みなさんにたいがい欠けているのは 用心深さ
娘さんたち  ご覧なさい 釣針をもって誘惑する男たちを
さもないと  あとで後悔することになりますぞ

とこんな話はこれぐらいにしておいて、この曲『ます』のシューベルトの原詩には、 左のような第4節があって、教訓的なオチをなしているのをご存知だろうか。
シューベルトは賢明にも、この部分を省いて作曲したらしい。

by くりんと 


(※ オルゴール曲『鱒』は、テキスト音楽「サクラ」によって、くりんとが制作しました。)