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Guitar Case 101

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南北戦争の銃弾

 25年ほど前、行きと帰りの飛行機の搭乗券だけを用意してアメリカ旅行に出かけた。1ドル=150円の時代だったので、それだけで30万円ほどかかったと記憶している。したがって、向こうではグレイ・ファウンドの長距離夜行バスを利用し、交通費・宿泊費は節約する旅だった。ニューヨークからシカゴ、そしてニューオリンズまで縦断したところで、とうとうその苛酷さにギブアップ。案内所で安いモーテルを探してもらい、次のワシントンへは飛行機を使うことになる。

 ニューオリンズは居心地よく2泊3日の滞在だった。ストリートのデキシーランド・ジャズやジャズバーでのアルコールに興じ、また、ミシシッピ川を遊覧船で下った。そんな中、とある骨董品屋に立ち寄ると、ケネディ大統領の肖像が刻印されたクォーターや記念銀貨が目に入り、興奮買い。


 店を出ようとすると、白い石がびっしり詰まった丸く大きな瓶が目にとまった。よく見ると1つ1つ銃弾のようにも見えるが、ずいぶん摩耗している。段ボールの破片みたいなものには、マジックで「Civil War $1.00」と書かれてあった。その時点では意味がわからず、モーテルに帰って辞書で調べてみると「Civil War=南北戦争」とあった。ということは、あの白い石のようなものは、南北戦争のとある戦場から拾い集めてきた銃弾で、1個1ドルというわけか。溜飲が下がるといても立っても入られず、無性に欲しくなって夜が明けるのが待ち遠しくなった。
 ニューオリンズ滞在3日目で、この日は、ワシントンに向けて出発の日だ。モーテルから歩いて20分ほどのところに例のお店があったと記憶しているが、わくわくしながら尋ねてみると頑丈な鉄格子のシャッターが降りていた。開店にはまだ早かったのかなとも思ったが、周辺の商店は軒並み同じ状態だ。この日は日曜日。アメリカの一般的なお店は、日曜日は休息日でお休みということに気づく。
 「へぇ〜〜〜っ!」この時の落胆は、25年経った今も、心残りとして続いている。知り合いがアメリカへ行くと聞くと、ニューオリンズへは行かないかどうか尋ね、「南北戦争の銃弾」をお願いしようと試みてきたが、今なおそんなチャンスには巡り会っていない。

 ところが、数ヶ月前、ネット上で「南北戦争150年コイン・切手・銃弾セット」なるものを見つけた。「これだ!」ところが売り切れ。整い次第発送するよう予約入れておいたら、先日、突然届いた。真っ先に銃弾を手にする。ずっしりと重い。あの時は白い石と思っていたが、よく見ると鉛のようである。25年間の想いが、文字通り銃弾の重みと重なる。
 「われはもや 安見児得たり 皆人の得難にすとふ 安見児得たり」
 25年来の心残りが、やっと消えた瞬間である。

by くりんと